一般貨物運送業許可とは、他人の需要に応じ、有償で、自動車(三輪以外の軽自動車及び二輪の自動車を除く。)を使用して貨物を運送する事業を始めるために取得する許可のことを言います。『貨物』という部分がポイントで、同じく有償ですが、『人』を運ぶ場合は旅客自動車運送事業となります。
一般貨物運送業許可の条件
一般貨物運送業の許可を得るためには大きく4つの項目について条件を満たす必要があります。
資金の要件
事業開始のための資金として運送業を始めるのに必要な初期費用と開始後半年間又は1年間の経費(人件費、車両のリース代など)の確保が必要となります。必要額については一律に定められているわけではなく、事業規模などに応じて個々の事業計画に沿って計算して金額を算出します。ここで計算された事業開始資金を申請時に確保している必要があり、申請時には金融機関から発行された残高証明書を添付して資金確保が出来ていることを証明しなくてはなりません。また、申請後にも1回残高証明書の提出が求められ、その時点でも事業開始資金以上の残高があることが必要となります。
人の要件
人の要件は、申請者が欠格事由に該当していないこと、運転手を5人以上確保できること、必要な資格者を確保できることの3つに分かれます。
申請者(個人事業の場合は個人事業主、法人の場合は法人の役員)が下記の欠格事由に該当していないこと
- 1年以上の懲役又は禁固以上の刑に処せられ、その執行が終わり、又は執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者
- 一般貨物自動車運送事業又は特定貨物自動車運送事業の許可取消しを受け、その取消しの日から2年を経過しない者(当該許可を取り消された者が法人である場合は、当該取消しに係る聴聞の通知が到達した日前60日以内にその法人の役員であった者で当該取消しの日から2年を経過しないものを含む)
- 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者又は成年被後見人であって、その法定代理人が①、②又は④のいずれかに該当する場合
- 法人であって、その役員のうちに①~③に該当する者のあるもの
運転者が5名以上確保できていること
一般貨物運送業の許可を取得するためには5台以上の車両が必要となります。その5台を常時動かせる体制を確保するため5名以上の運転者が必要となります。この5名については申請時に揃っていなくても問題ありません。(確保予定として申請を行います。)ただし、許可取得時までに雇用する必要があります。
配置が必要となる資格者を確保できていること
一般貨物運送業の許可を取得するのに必要となる資格者は運行管理者、整備管理者となります。(運行管理補助者と整備管理補助者の選任は必ずしも必要ではありません。)
運行管理責任者は運転者との兼任が出来ません。(整備管理者、整備管理補助者との兼任は可能。)また整備管理者は運転手との兼任が可能です。
つまり、運送業を開始するには最低でも6名(運転者5名、運行管理者1名、整備管理者は兼任できるため重複カウントはせず)の人員確保が必要となります。
場所の要件
場所の要件については、営業所、休憩施設、睡眠施設、それぞれ基準が定められております。
営業所の要件
市街化区域内にあること、建築基準法・消防法・農地法等に抵触していないこと、適切な使用権限があること、適切な広さを有していること、車庫から直線距離で10km以内の場所にあること、などが求められます。
休憩施設の要件
営業所の要件と同様です。適切な広さについては、運転手が休憩を取るのに必要な机や椅子の備え付けができる広さ(同時睡眠者1人当たり2.5㎡以上)が必要となります。
睡眠施設の要件
営業所の要件と同様ですが、睡眠施設の設置は必須事項ではありません。また、休憩施設と睡眠施設は同じ場所でも構いません。同じ場所に設置する場合は、上記の机や椅子等に加えて、布団やベッドが置ける広さ(同時睡眠者1人当たり2.5㎡以上)を確保する必要があります。
車庫の要件
車庫は、無蓋車庫であれば基本的には市街化調整区域でも問題ありませんが、交通安全上支障がない場所であること等の規定が定められています。主に下記の8項目を満たしている必要があります。
- 営業所から直線距離で10km以内にあること
- 使用する車両を容易に収容できる面積があること(車両同士又は車庫と車両の間に50cm以上の隙間が確保できること)
- 車庫前面道路の道路幅員証明書が取得できること
(『車両の幅 ≦(道路幅員-0.5m)/2』等の制限がありますが、一方通行や交通量、その地域の現状によって変わるため、その都度確認が必要です。 ) - 出入口前面道路に通学路などの交通規制がないこと
- 5m以内に交差点、曲がり角、急な坂がないこと
- 10m以内に、バス停留所、横断歩道、横断陸橋、踏切がないこと
- 200m以内に幼稚園、保育園、学校、公園など児童の行き来する施設がないこと
- 駐車場出入口が車両が出入りするのに十分な幅が確保されていること
- 申請者が土地について2年以上の使用権原を有すること(借用で、かつ、賃貸借契約が2年未満であっても、契約期間満了時に自動的に当該契約が更新されるものと認められる場合に限っては、使用権原を有するものとみなす。)
なお、中部地方整備局では、現在4~8については要件ではなく、「注意事項」とされており、車庫の場所を管轄する警察署に事前に相談をすれば良いこととなっています。
一般貨物運送業許可申請のおおまかな流れについて
- 陸運局との事前打ち合わせ
- 申請書類作成
- 申請(偶数月の月末が締め切り)
- 役員法令試験(申請月の翌月以降の奇数月に受験)
- 資金の確認
- 許可
- 選任届(運行管理者・整備管理者)提出
- 労働保険・社会保険の加入、36協定の締結、就業規則の届出
- 運輸開始前の届出
- 自動車運送事業用自動車等連絡書の交付
- 車検証書き換え、営業用ナンバーに変更
- 運輸開始届・運賃料金設定届提出
- 適性診断、健康診断の受診
- 初回の指導